硬派の宿命・野望篇

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柴田のジャーマン

この写真のUPを待ってました。TV観戦から1日置いて感想を書きます。

総合格闘技のリングで、綺麗に弧を描いた人間橋。

MMA参入初戦の1勝から、実に2年振りの勝利を判定決着ながらもぎ取った柴田勝頼。
しかし、正直言って今回の対ミノワマンというプロレスラー同士の「番外地」的な試合は、これまで彼が臆することなく並み居る強豪たちと最前線で闘ってきた足跡を振り返ると、そのいかにも勝負論から外れたサシミのツマの如き「プロレスラー枠」としての扱いは実に残念な限りでした。日和るのはまだ早いだろう、と。

でも、改めて試合の写真を観てみると、やはりプロレスラー。実に絵になる。
これは他の純総合格闘家の試合写真群と比較するとよくわかります。

DREAM.8 ウェルター級GP2009 開幕戦

近年はPPVやネット配信などで手軽に、そしてじっくりと試合の映像を視聴出来る環境にある私たちですが、昭和の時代にプロレスを観始めた少年にとって試合の視覚情報は、会場に足を運ぶか、リアルタイムでTV中継を観るか(まだビデオもあまり普及していなかった)、あるいは専門誌のグラビアを食い入るように眺めるかしか手段がありませんでした。
中でも一番手っ取り早く、そして何度も繰り返し見られるのが雑誌に掲載されている試合の写真。

当時、カラーグラビアが掲載されている専門誌といえば「月刊ゴング」「別冊ゴング」「月刊プロレス」といったところでした。特に「ゴング」系列誌の写真は抜群に美しかったと記憶してます。そこに焼き付けられた猪木、藤波らの躍動する姿に魅入られました。

不思議なもので、生観戦やTV中継ではそれほど印象の強くなかった技やムーヴが、グラビアの静止画像で観ると実にドラマチックな「絵」として完成されていることが何度もありました。逆に、先に写真で見て期待していた過去の名勝負を改めて観てみると、意外と呆気ない内容だったり。
それだけ静止した写真のインパクトと、そこに内包されたドラマ性は、饒舌ではない故にこちらの想像力を駆り立てるだけの影響力が確実にあったと言えるでしょう。

おそらく当時は情報が少ない分、受け手は様々な妄想を膨らませ、また送り手(カメラマンや編集者)も「一発勝負」的なニュアンスで1枚の写真に全精魂とメッセージを注いでていたのでしょう。それが劇的な瞬間を捉えた「絵」となり、その試合の記憶を封じ込めて我々の脳内へと伝達されていたわけです。

しかしそういう手法も、80年代初頭のプロレスが黄金期を迎えて各専門誌が週刊化され、引いては「最も絵になるプロレスラー」猪木の選手としての衰退と比例するようにどんどん質が落ちていったような気がします(ビデオデッキの普及も影響しているかも知れません)。
お陰で受け手も送り手もビジュアルに対するテンションが落ちたのでしょうか、以降はロジックを駆使した「活字プロレス」が主流になっていきました。

...そしてプロレスと格闘技が完全に棲み分けされてしまった現在、真剣勝負のリングで猪木の末裔が黒いショートタイツ姿でジャーマンを繰り出す。そんなシーンが「絵」にならない筈がないでしょう。甘い考えかも知れませんが、この瞬間、柴田の意志は「格闘芸術」を遂行したのだと私は確信しました。

たった1枚の写真に、リング上の真実はすべからく投影されているのかも知れません。

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