硬派の宿命・野望篇

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『そして彼が死んだ』北方謙三

幸先が、よかった。

と、北方先生風に唸ってしまうほど、現在の心境にマッチした一冊だった。
ここ数ヶ月ほどまったく小説を読む気にならなかったのだが、これから心機一転、本来の男一匹で明確かつ無謀な目標に向けて踏み出していこうというムードにぴたりと重なった。これが男のシンプルさだ。


自動車修理工場を営む小川は妻と高校生の息子、そしてすっかり愛想のなくなった老犬と共に平凡な日々を暮らしていた。
ある日、事故で大破したと思わしきポルシェの「起こし」を依頼しに、一人の男が彼の工場に訪れる。矢部という、どう見てもカタギとは思えないその男は、小川を惹きつける不思議な魅力を持っていた。
元々レースカーのメカニックだった小川は、その無茶な注文を一旦は拒絶するが、矢部のどこか憎めない愛嬌のある性質、そして彼が過去に身に就けていた技術者としての徹底したスキルとプライド、さらに内に秘めた「ぎりぎりのやり取りへの渇望」に導かれるまま、すべてを引き受ける。
その一件の後、矢部との信頼の絆を深めた小川は、彼とコンビを組み中古車の海外輸出の片棒を担ぐ。やがて、そんな彼らの商売に駆逐された格好となった古参の大物中古車ブローカーとの抗争へ巻き込まれてゆくことになる。自らの本能の赴くままに。


...まあ、ざっと流れを書き出すとこんな感じでしょうか。

要は名作『檻』の流れにある近年の『擬態』『煤煙』などへと繋がる、90年代以降の歴史大作群を通過した上での、彼本来の資質でもある "そこはかとない純文学的エッセンス" の散りばめられた「北方・現代ハードボイルド物」への系譜とでも括ればいいのか。
何不自由なく安穏とした生活を送っている中年男が「あること」を契機に己の秘めたる獣性に目醒め、ひたすら暴走してゆく...たとえその先に破滅が待ち受けていようとも。
この点に美学が感じられるか否かで、おそらく人間は2種類に大別されてしまうのだろう。

ということで、健全に現在の安定した生活をまっとうされたい方にはお勧めしません。
それはひとえに、本作を単なる「男のハーレクイン・ロマンス」としてお手軽に読み飛ばして頂きたくないからである。自身の実人生に投影させなくて何が読書か。


そして彼が死んだ (講談社文庫)そして彼が死んだ (講談社文庫)
(2009/05/15)
北方 謙三

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